南正時の湧水名水絵日記
2007年5月の水の旅です
■連休はご近所の「湧水探訪」
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4月は本職が忙しくなかなか湧水を巡る旅ができなかった。忙しいためか疲れが出て身体の調子もおかしい。肩は凝るし、歯茎は腫れて歯痛になるし、のんびり湧水の旅がしたいところだ。連休中はのんびり過ごすことに決定。ということで家内共々、ご近所の新緑を愛でに行く。神泉の自宅から徒歩5分の松濤鍋島公園に行く。緑濃い都心の公園で池は湧水池になっているが湧水量は確認できない。水車がリニューアルされている。今回の「旅」で新発見。公園正門のとなりの民家の軒先に手押しポンプを見つけたのだ。使用していないようだが、「迎え水」を注入すれば作動するのでは?と思う。ご近所さんに聞くと地下水位の低下と、公園の池への地下水のポンプアップと同時に枯れたという。もう少し掘って地下水を探し当てれば「神泉」の名水が復活するのだが。のんびり歩いて駒場方面に行く。農大のケンネル田圃はレンゲの花ざかり。湧水池からの水量もかなりある。ここでも新発見。湧水は温度を調節するため、一旦水深の浅い水田の池に貯えられ田圃に流れる。この温度調整池も今回の「旅」で初めて気がついた。そして公園内の森を散策すると、なんと釣瓶井戸を発見。説明によると8メートルの手掘り井戸だという。ここも地下水位の低下で枯渇しているが、かつてこの周辺が湧水の地であることを物語っている歴史の証人であった。
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松濤鍋島公園の湧水池。ケンネル田圃への湧水はこの水槽に貯えられる。雑木林の中にある手堀りの釣瓶井戸。かつてこの地域の生活の水だったという。
今日も何かを求めて家内共々新緑を愛でる「旅」に出る。行き先は神代植物公園と深大寺。家内は「ハンカチの木」と「ナンジャモンジャの木」が見たいという。つつじケ丘からバスで神代植物公園に行き「ハンカチの木」に直行。目立たない木だが、白絹を垂らしたような花弁が面白い。それと園内の新緑も素晴らしいし、フジの花が満開だ。園内の雑木林の新緑を愛でながら深大寺に向う。まずは昼食に門前の深大寺そばを食べる。家内は天ざる、私はもりそば。気温が高めなので冷たい蕎麦は旨い。境内の対の不動滝と、手水の井戸を見る。井戸の水をひとくち飲む。新緑の頃の水はまた格別だ。手水のすぐ後方に「ナンジャモンジャの木」が真っ白な花を咲かせている。まるで新緑に積もった新雪のようで美しい。境内から水生植物園に向う。ここはハケの湧水のメカニズムがよく分かる。園内を小川となって流れる新緑が育む湧水は感動的である。バスでつつじヶ丘駅に行き、駅から歩いて武者小路実篤の旧宅と公園に行く。住宅地の散歩もいい。実篤は昭和30年、70歳のときこの地に居を構えた。「水のある場所に住みたい」という願いが叶ったものだ。邸内から湧出した水は、斜面を滝となって流れる。羨ましい環境である。実篤邸宅から仙川駅まで歩き京王線に乗る。家内と明大前で別れて、私は飯田橋の知人の歯科医のもとにゆく。歯茎の腫れの治療。切開して歯の掃除をして痛み止めを貰う。今日は新聞社の編集者と築地でイッパイやる予定だったが、これでは酒は飲めそうにもないのでキャンセル。渋谷に戻り、いつものフィットネスクラブに行く。先週は計5000メートルも泳ぎ、これが疲れに拍車をかけたと思われるので、今日は軽く30分間水中を歩いて100㍍ほど泳いで上がる。
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これがハンカチの木。神代植物園のフジ棚にて。深大寺の不動の滝湧水。モミジの新緑とナンジャモンジャの木。水生植物園の湧水による小川のせせらぎ。実篤公園の湧水池。
快晴の連休。今日も家内と共に初夏の「小さな旅」に出る。地下鉄千代田線で根津に行き、根津神社のつつじ祭を見る。やや盛りは過ぎたつつじだが、それでも見応えはある。本郷台からの湧水がかつては存在したが、現在は地下水の汲み上げによってつつじの庭園に注いでいる。境内に出ている露店が懐かしい。のしイカや駄菓子を買って、根津界隈の路地を歩く。根津の「弥生美術館」で学芸員の中村佳子さんに会う。近々連載中の新聞のコラムに執筆予定の「竹久夢二」に関する取材で、夢二について聞く。中村さんは所蔵の高畠華宵のさし絵から「昭和の美少年手帖」なる名書を出されている挿絵研究の第一人者だ。美術館の中庭には本郷台からの地下水を汲み上げた水が庭園の池を潤している。ランチを美術館のカフェテラスで済ませて、上野方面に再び歩く。途中、東大の池之端門にある「弁慶の鏡井戸」に寄る。義経が奥州に行く際に弁慶が見つけた「名水」という。近くに住んでいた横山大観画伯も顕彰している。不忍池界隈を歩き下町資料館に行き「黄金バット」の紙芝居を見る。懐かしい。アメ横を御徒町まで歩き山手線で渋谷に戻る。遠出をしなくとも楽しい街歩きだった。駅で家内と別れフィットネスクラブに寄り40分ほど泳いだり、歩いたりのストレッチをして30分のマッサージで足を揉み解す。
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根津神社のツツジ。東大裏の弁慶の鏡井戸の名水は健在。「弥生美術館」の高畠華宵のさし絵をまとめた「昭和美少年手帖」(中村圭子・編著)。下町資料館に再現されている昭和30年代の茶の間。
家内共々、連休の身近の小さな旅は小金井に出かける。井の頭線から中央線に乗り換えて40分で武蔵野の雑木林と崖線が広がる。大岡昇平の「武蔵野夫人」にも登場する「ハケの道」は清流「野川」沿いに点在する。その面影を求めて東洋経済大学の敷地内にあるハケからの湧水「新次郎池」から、貫井神社、滄浪泉園まで歩く。新緑の雑木林が美しく、野川沿いの散策も心地よい。ただ気温が25度を越し、少し暑い。松阪木綿の単の着流しでは、下着にじんわり汗をかく。それもまた気持ちいい。「新次郎池」は水量少なくほとんど枯渇状態。これからの湧水シーズンを期待したい。貫井神社の湧水はいつも水量豊で一定している。ここは私の好きな湧水のひとつ。池に注ぐ水路もいい雰囲気だ。滄浪泉園の「ハケの湧水」は、まるで湧水のモデルを見ているよう。水量豊に湧き出し、しばし立ち去りがたい湧水の風景を見せていた。2時すぎの遅いランチは小金井駅前の居酒屋のランチ。グラスビールと鯖塩焼き定食。歩いたあとのビールは格別。渋谷に戻りフィットネスクラブに寄って400㍍ほど力を入れて泳いで水中歩行とストレッチを計40分。自宅に戻り、夏モノの縮に着替えて再外出。杉並で行なわれるフランスの新進映像作家の上映会と、トークショーに行く。二次会は近くのイタリア料理店。金曜日に放送された「ルパン三世」クローン人間が話題になる。あまり評判が良くなかった映画だが、再見するとなかなか見応えがあった。時代を先取りした映画といえよう。私の前にはその映画を担当したアニメーターもいる。ついつい古いアニメの話が盛り上がり午前さまで終電もなくなり、荻窪からタクシーで帰宅。
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新次郎池は只今枯渇中。貫井神社の本殿横の湧水の流れ。滄浪泉園のハケの湧水は少しばかり「感動的」な湧水風景。湧水のジオラマのようでもある。(右3枚の写真が滄浪泉園のハケの湧水)
昨年から時間があると東京都が選定した「東京の名湧水57選」を訪れ、再取材している。この57選に関しては選定に苦労の後も見え、妥当な結果だと思うが、改めて都内の湧水を訪れてみると「これで良いのか・・」という疑問も湧く。例えば地域的に偏るのは仕方がないとして、湧水の多い町田市の湧水は、はたして名湧水に値しないのか?。と思うのである。離島の名湧水が選ばれていることも、私にはうれしい選定だが、八丈島の湧水はそれに値いしないのか?。八丈島の湧水は苦難の歴史を秘めたものばかりなのだ。選定を担当した人たち、文化人は実際に訪れてみたのか?。などの疑問も残る。何にも反発する私の性格から、いま一度57選を訪れてみて検証したいと思っている。午後から出版社との打ち合せのために高田馬場に行く。連休明け、正月休みが明けたような雰囲気で電車も満員。仕事の打ちあわせを終えて、おとめ山公園に新緑と湧水を見に行く。おとめ山の湧水は都心近くにあり、ホタルの養殖も行なわれている。東京の57名湧水のひとつでもある。池は澄みきった水で、新緑を映して美しい。湧水も台地から湧き出している。そのまま神田川まで歩く。南こうせつのフォークソング「神田川」は下落合付近の神田川を唄ったものだと思う。木造アパートも残り、横丁の風呂屋もまだ健在だ。高田馬場を散歩した後、渋谷に戻りフィットネスクラブに行き45分水中歩行やストレッチ。500㍍ほど少し力を入れて泳ぐと疲れた。家にもどって、先月の嵐山光三郎さんとの対談の校正が届いたので目を通す。
おとめ山公園の湧水池。きれいな水を湛えている。湧出口近くの水の流れは都心の湧水とは思えない光景。「神田川」、南こうせつはこの辺りをイメージしたようだ。
■新緑の奥多摩へ古刹の「湧水巡礼」
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奥多摩方面に行く。青梅線直通電車で青梅まで行きレンタカーを借りて奥多摩へ。大丹波地区の林道を経て川乗山中腹の「獅子口湧水」まで向かう。林道の駐車場から谷の登山道を進む。結構ハードな登山道で杖を手に登る。一応、道に迷い「遭難」のことも考え、カロリーメイト二個とチョコレートの非常食も携帯。50分かけて獅子口湧水に到着。新緑が実に美しく、その下の石灰岩の割れ目から大丹波川の源流の湧水がある。40分ぐらい取材をして今来た山道を戻る。３時間強いの山登りだった。足の筋肉がパンパンに張っている。青梅街道沿いの温泉に立ち寄り、昼食と温泉の休息。30度近い暑さなので白絣の夏モノ着物に着替えて、奥多摩の「むかし道」などを巡る。「境の清泉」ではわさび田の湧き水が美味しい。「釜の水」は楽しい湧き水。夕方近く、青梅市内まで戻り「地蔵院の横井戸」「玉泉寺」「金剛寺」「閼修院」など古刹の湧水を巡る。宿は多摩川沿いの「かんぽの宿」。温泉があるのがうれしい。温泉のジェットバスで太腿から足首までマッサージで楽になる。
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獅子の口湧水。久し振りに山歩きを楽しむ。釜の水は水質検査表が添付。わさび田の「境の清泉」。「地蔵院の横井戸」も良き湧水の風景を醸しだしている。
朝6時に起きて宿の近くにある「地蔵院」を散策。境内に横井戸から引いた手水がある。宿に戻り温泉に入り朝食後にチェックアウト。疲れはほとんどない。あきるの市方面に向う。「真城寺」「白滝神社」に行く。真城寺の湧水は私が大好きな湧き水。崖線からの湧き水がはっきりと確認できる。「八雲神社の湧水」「二宮神社」の湧水もすばらしい。特に二宮神社の湧水は「名水百選」の価値があると思う。足を伸ばして東大和市の「二ツ池公園」に行く。湧水は枯渇寸前で染み出す程度。あまりいい雰囲気とはいえない。これでも「東京の名湧水57」のひとつだ。福生地区の「清岩寺」に行く。ご住職自らのご案内で湧出口に行く。いろいろ湧き水について興味ある話を聞く。龍津寺の崖線の湧水を見た後、羽村の古刹「禅林寺」にある中里介山の墓に出向く。大河時代劇小説「大菩薩峠」の作者だ。私は作者もさることながら主人公机竜之介の墓と思って参拝する。この寺にも湧水があるが、水量は少なかった。ラストは「一峰院」に寄って、4時近くにレンタカーを返して青梅線で吉祥寺経由で渋谷に戻る。
■井の頭線沿線散歩
八雲神社の湧水池からの水路の洗い場。二宮神社の澄みきった湧水池。「清岩寺」と、豊富な水量を誇る源流付近。「一峰院」の湧水。
5/11
朝から仕事場で原稿執筆などの仕事モード。パソコンの前の仕事はストレスが溜まり私の場合ストレスから血圧があがるので、ストレス解消のため午後から外出。散歩がてらに久我山まで井の頭線で行く。井の頭沿線には農大ケンネル田圃、鍋島公園、大宮神社、善福寺川、井の頭公園など多くの湧水が存在する。今回は久我山近くの玉川上水付近を散策する。古刹が集中する北烏山へ足を伸ばし専光寺の喜多川歌麿の墓を訪れ、隣接する烏山弁天池に行く。この湧水は「東京の名湧水57」に選ばれているが、汚れた池で湧水のある風景は感じられない。果たして湧水は存在するのか?と疑問まで感ずる。久我山から渋谷に戻り、渋谷で編集者と会い仕事の打ち合せを済ませて帰宅。
■洞窟の名水
久我山付近の玉川上水。専光寺の歌麿の墓。「東京の名湧水57選」の烏山弁天池、辺りの雰囲気はいいのだが湧水の風景は感じられない。
5/12
午前中から多摩方面に向かう。夏もの単の着流しが爽やかな気分。初夏の風が身体全体で受けているようだ。稲城市矢野口の古刹威光寺に向う。ここには境内の洞窟（横穴古墳）内に名水が湧き出て、蛇のご神体が祀られている。洞内は真っ暗なので、拝観料を払えば懐中電灯とロウソクを貸してくれる。湧出は「金洗いの井戸」からのようだ。あまり洞穴は好きでないのだが、取材なのでロウソクの灯を頼りに撮影をする。洞内に弘法大師像、巨大蛇が鎮座して薄気味悪い。近くの穴澤天神社に行く。ここは名水の祠で、ご神水が湧き出ている。飲んでみると実に美味しい。神主に聞くと、「何箇所かの湧水をまとめたので水量が多くなったという。水質検査も行っているが一応煮沸して利用を・・」という。調布に出てバスで深大寺に立寄り「深大寺そば」を食べてから、渋谷に戻りフィットネスクラブでクールダウン。300㍍ほど力を入れて泳ぎ、20分の水中歩行の後、水中ヨガのレクチャーを20分受ける。マッサージを30分受けてから帰宅。連載している新聞社の編集者が来宅。
5/14
洞窟の湧水を「探検」。洞窟内の「金洗の井戸」。穴澤天神社の湧水は美味しい水。散策の水分補給にありがたい水だった。穴澤天神社の崖線の森。
今週は中国・麗江への取材旅行が控えている。世界遺産の水の都で、これまでどうしても行きたかった所のひとつだ。旅行を前に日刊紙2紙に連載中のコラム原稿の書き溜めをする。連載原稿の書き溜めは苦手で、これまで締め切り日ギリギリの入稿が続いていた。何とか日経の長期連載が続いている「懐かしい風景」を2週分を執筆してメールで入稿する。午後から八王子方面へ散歩がてらに出かける。百草園で下車して駅から徒歩10分弱の小沢緑地の湧水へ行く、三沢泥岩の露頭の湧水で、日野市唯一の滝がある。だが、鉄条網が張り巡らされ一切立ち入り禁止。せめて遊歩道ぐらい整備して「滝」を見せてほしい。道端の「東京の名湧水・小沢緑地の湧水」の立派な看板が虚しいし、過保護な湧水といったところ。それでも下流の住宅地の裏には、湧水からのせせらぎが確認できたし、通りには古井戸が存在していた。八王子に行きバスで「小宮公園」に行く。ここは緑地に木道が整備され、自然が色濃く残っている。雑木林の中からの湧水が小さなせせらぎを作り弁天池に流れている。都市部に近い地域にこんなに素晴らしい森があるとは信じられない。気分も良く帰りのバスに乗り、京王特急で渋谷に戻る。いつものフィットネスクラブに立寄り、空いたプールで1800㍍ほど泳ぐ。15分程度プール内でストレッチして計1時間で上がる。水泳は私の健康維持の運動。水泳には子供の頃から自信がある。自宅近くの神泉の泉跡のコーヒー店「ラ・フォンテーヌ」で編集者と単行本の打ち合せをする。少し水泳の疲れが出るが夕食の私の好物「トマトづくし」コースに食欲はモリモリ。
5/15
小沢緑地の湧水は立入り禁止の非公開。住宅の裏からの湧水のせせらぎ。小宮公園の雑木林の湧水。柵の向うから湧出している。湧水は弁天池に注がれる。
5月に入って湧水巡りが多い。特に梅雨に入る前に「東京の名湧水57選」を私自身の目で検証したい。海外への取材旅行を控えて慌しい毎日だが、日刊ゲンダイの連載コラムの原稿2週分を書き上げて、午後から世田谷の岡本静嘉堂緑地に散歩がてらに出かける。国分寺崖線からの湧水があちこちから湧き出ている。雑木林の湧水の流をたどると「自噴水」がその源だった。はたして本物かレプリカかはわからないが、本物だとしたらたいした水量だ。崖の上の静嘉堂文庫、美術館を経て古民家園に行くと、竹やぶの中に古い釣瓶井戸があった。いい雰囲気の農家のたたずまいだ。ほたる養成の湧水もあり、なかなかの水量と見た。ほたる池からの湧水は、せせらぎを作り、ここにはレプリカの自噴井戸がある。湧水大好きな私には絶好の散策路だった。渋谷に戻りフィットネスクラブでクールダウン。300㍍ほど力を入れて泳ぎ、水中歩行、ストレッチなど50分ほどする。
5/16
岡本静嘉堂緑地の湧水の流をたどると「自噴井」(?)があった。古民家園の竹やぶの中の釣瓶井戸。緑地公園の川は花菖蒲が見ごろ。
実業之日本社で刊行される私の鉄道本の取材がはじまる。ほとんどはストック写真で間に合わせるが、中央線の新型電車などは撮り下ろさなければならない。午前中に中央線へ撮影に出かける。国分寺近辺の雑木林付近で撮影する。西国分寺駅近くに「姿見の池」があるので立ち寄る。まだ「ナウシカ」を作る前、宮崎駿さんと「武蔵野線」が湧水に及ぼす影響について話たことがある。「武蔵野線の地下化で多分、秋津、狭山あたりの湧き水は壊滅だろうね」と言っていた。1991年（平成3年）10月12新小平駅が湧水のため冠水。2ヶ月に亘って西国分寺～新秋津間が不通となったことが、地下工事が湧水に与える影響を如実に証明したものだ。宮崎さんの言うとおり武蔵野線は多くの湧水を消滅させ、水量を減少させた。 姿見の池に注ぐ地下水の水路には小魚が銀燐を光らせていた。「となりのトトロ」で、小川で銀鱗を見せて泳ぐアニメのカットがあった。メイちゃんの家には手押しポンプがあった。この描写に宮崎さんの湧水の自然回帰が表れている。だが、今の宮崎さんには、それを振り返る余裕はない。途中で鉄道写真を撮りつつ、有楽町に向かう。銀座の実業之日本社に行き、鉄道本の打ち合わせと、一部の原稿を渡す。夕方、渋谷に戻りフィットネスクラブに立ち寄り、1400㍍ほど泳いで水中ストレッチをする。帰宅して明日からの中国旅行の準備を始める。
武蔵野線からの地下水で蘇った姿見の池。池に注ぐ水路には小魚も泳ぎ、私には懐かしい風景だ。宮崎アニメのワンシーンを見るよう。
■麗しの水の都、中国・麗江へ
5/17
昨日はぎりぎりまで仕事に追われ旅支度もままならず、朝になって慌しく支度を始める。エクセル東急から10時50分発の空港バスで羽田へ。国際線の手続きを済ませる。12時50分関空行きJAL179便に搭乗。関空で接続までに3時間近くあり、その間に昆明行きのJAL5152便、中国東方航空とのコードシェア便の登場手続きを済ませる。昆明は20年ぶりだ。恐らく町はすっかり変わっていると思う。数回の乗り継ぎの末、21時過ぎに昆明に到着。空港ホテルに向かいチェックイン。明日はいよいよ長年憧れていた湧水の麗江に入る。(中国・昆明で執筆更新)
5/18
昆明は小雨が降っている。午後から行く麗江の天気が気になるところである。朝食後、ゆっくりチェックアウトをして直ぐ前の空港に1時間半前に行く。12時30分、中国東方航空MU5714麗江行きに搭乗。40分遅れで離陸。麗江に近づく頃には雲も切れて天気が良くなり、40分のフライトで到着した麗江空港は快晴。ついている。迎えの車で35キロ離れた市内へ向かう。ホテルは世界遺産「麗江古城」の入り口にある「格蘭大酒店」で絶好のロケーション。日本語を話すボーイに案内された部屋が、玉龍雪山を望む良い部屋だ。「ここずーっと雨が続き、今日午後から晴れた」ということ。天気がいいので、荷物を置いてすぐ麗江古城を歩く。水路をめぐらせた800年前の町並みが素晴らしい。湧き水「三眼井」へ行く。懐かしい井戸端会議のようで、ここまでは観光客も来ない。生活の井戸といったところ。湧水口の水をひと口味わい、ペットボトルにホテルまで持って帰る。古城内は自動車が走れないため、ひたすら迷路のような石畳の路地を歩かなければならない。水路には穀物を挽く小さな水車や、水路の分岐など風情ある水辺の風景が見える。水の旅には麗江は格好の場所だ。一旦ホテルに戻り、2日分の洗濯をして「乳頭の湯」を入れた熱い風呂に入って疲れを取る。風呂から上がると目の前に5536㍍の玉龍雪山がほぼ頂上まで見える。万年雪をいただいた名山である。部屋の下の陸橋は絶好のビューポイントでカメラを構える観光客が多い。和服に着替えて食事に出る。地元の人で賑わっている居酒屋風菜館に入り、地元の家畜の肉のバーベキューと、地ビール「大理ビール」を注文。日本風にいえば名水仕立てのビールだが、そんなに旨いビールではない。それでも標高2400㍍の高地のためか、酔いが回ったような気がする。寝る前に名水「三眼井」の水で持参したドリップコーヒーと緑茶を点て呑む。実に美味しい。今日は短時間に当初の予定より取材を多くこなしたので、残り2日の予定が楽になる。(中国・麗江で執筆更新)
5/19
玉龍雪山の雪解け水が古い町並みを流れる。壮観、800年の歴史を誇る瓦屋根の麗江古城の町並み。湧水「三眼井」は、世界遺産の名水。湧出口、野菜洗い、洗濯ものの三つの水槽からなる。ホテルの部屋から玉龍雪山がつかの間の雄姿を見せてくれた。
麗江と日本の時差は1時間だが朝、7時はまだ薄く暗く、夜は7時ごろまで太陽が高い。2時間程度の時差があるような気がする。日の出と共に素晴らしい天気だ。「麗江晴れ」というべき快晴で、玉龍雪山の残雪が朝日に赤く輝いている。今回の取材では一番心配なのは天気だったので、取材も順調だ。朝食前に近くの古城の柳並木の水路を散策して、朝食を済ませて9時前には黒龍譚に行く。ホテルからは2キロ弱。玉龍雪山の雪解け水が湧出して、麗江古城内の水路を流れる。広大な敷地を上流に向かって歩くと、最上流には湧水の湧き出し口のようなものがあるが、本物の湧出口かは不明。水路の水源を担っているので水量は多い。公園内に「真珠泉」があるが、湧水は確認できない。資料によるとここの泉は飲用にもちいたという。3時間ほどかけて黒龍譚を巡り、古城の「茶馬古道」を行く。細い路地の所々に二箇所の井戸を見つける。「三畳井」と「石榴井」だ。共に洗濯をする住民に賑わっている。湧出口の水源では水を呑んだり、汲んだりする光景を目にする。生活に密着したいい雰囲気の湧水だ。備え付けの茶碗で石榴井の水を呑む。軟水のようで美味しい水で、ペットボトルに入れて今夜コーヒーを入れることにする。「南の三眼井」は、整備されすでに生活の井戸ではなく、おまけに水は出ていなかった。「四方街」付近には小さな湧水「溢礫泉」があり、飲用している人が多い。再び路地の石段を登り万古楼に行き、古城の俯瞰の展望を撮影して、午後3時にはホテルに戻る。ほぼ5時間以上歩きっぱなしで足が疲れたので「乳頭温泉」でゆっくり風呂に入る。天気に恵まれ日差しが強いこともあって顔は日焼けで真っ黒だった。これで明日の郊外の集落の取材が順調に行けば今回の旅行は大きな成果だ。(麗江で執筆)
5/20
柳並木の水路。黒龍譚では絵葉書のような写真が撮れた。上流の源流付近の湧水の流れ。名水「石榴井」で水を呑む。路地の小さな湧水。
今日も天気は良い。朝から郊外の湧水や、農村を訪れる予定で、9時に現地旅行社の日本語スタッフの黄さんがホテルに迎えに来てくれる。今回の旅でどうしても行きたい場所が、映画「単騎、千里を走る」(高倉健・主演/チヤン・イーモウ監督)のロケ地で映画の中で、路地いっぱいに酒宴の席が設けられた印象的なシーンの舞台になった場所だ。その場所は麗江郊外の束河古鎮の集落である。そこには麗江古城と同じ水路が巡らされ、源流は「龍泉寺」の龍泉という湧水だ。願ってもない所である。市内からクルマで20分、束河古鎮をのんびり歩く。ここも世界遺産のゾーンで、町並みは日本の宿場町を思わせる。水路には清冽な水が流れ、それにたどると龍泉寺に達し、そこには湧水池がある。水は澄み切り、池の底から大量の玉龍雪山の雪解け水が湧いている。途中の街中にも何ヶ所かの「三眼井」があり、ナシ族の主婦が洗濯をしている。石橋を渡った路地が映画のロケに使われた所で、近くに映画の舞台という案内があった。束河古鎮は印象的な村だ。今度はゆっくり来たい。クルマで15分の白沙に向かう。ここも宿場町の雰囲気で素朴な農村。黄さんの友人という一軒の農家にお邪魔する。広い中庭では少女が髪を洗っていた。お茶をご馳走になりながらいろいろお話をお伺いする。水は共同の水道から汲んでくるという。その場所は洗濯の主婦が集まっていた。どうも雰囲気的に「三眼井」があったようだ。この村にも1年後には上水道が各戸に普及するという。昼過ぎに麗江に戻り、黄さんと雲南名物「米粉の麺」を食べる。あっさりしたスープが絶品。麺も美味しい。残りスープで雑炊を食べたいところだ。夕方、黄さんに代わって同じ旅行社の牡丹江出身の康さんが付き合ってくれて古城内を歩く。明日は麗江を離れるので、康さんに見所ポイントを聞きただし、木府と初日に訪れた「三眼井」を再訪。夜は康さんと野菜を主体とした当地の名物シャブシャブを食べて、華麗な民族舞踊を見る。明日は麗江を離れるのが名残り惜しい。(麗江で執筆)
5/21
束河古鎮の「単騎、千里を走る」のロケ地の通。龍泉寺の湧水と池の中。美しい泉だった。三眼井ではナシ族の主婦が洗濯をしていた。右は麗江古城内の「三眼井」を再訪。
朝6時に起きて日の出前の古城地区を散歩。ようやく迷路のような麗江古城の路地も歩き慣れてきたところだが、今日は麗江を離れる。早朝の町並みもいい雰囲気で歩いていて気持ちがいい。8時過ぎにホテルに戻り風呂に入ってから朝食を済ませて荷物の整理をする。10時に旅行社の送迎車が来る。普段は50分かかる空港まで30分で走る。結構飛ばして荒っぽい運転だ。これが中国の交通道徳なのであろう。12時20分発昆明行MU5723、B737-300に乗る。45分のフライトで昆明到着。空港のレストランで軽食の昼飯を食べて、空港前のホテルにチェックインをする。天気がいいので市内までタクシーで出る。昆明空港から昆明駅まではクルマで10分、値段は約300円と至便の距離にある。昆明駅は30年ぶりに訪れるが、もちろんかつての面影はない。駅構内へは切符を持っていなければ入れないし、入り口で厳重な手荷物のx線検査をしているものものしさだ。さらにホテルから駅まで乗ったタクシーのすさまじい運転はどうだ。接触、衝突しないのが不思議だ。青信号の横断歩道を歩いていると自転車が突っ込んでくるし、公安(パトカー)さえも人を通すことはしない。どういう国だろう。私も含め、外国人(特に先進国)の人間はびっくりするだろう。これで本当にオリンピックなどやれるものだろうか。四川料理でも食べるつもりでいたが、街歩きで不愉快になったので6時過ぎにホテルに戻り「乳頭温泉」の風呂に入り、ホテルのレストランであっさりモノを食べる。麗江を離れたら少しでも早く日本に戻りたいものだ。
5/22
昨日の中国東方航空の機内誌「中国民航」に三社祭が出ていた。「是東京的最大的祭祀庚典活動・・。江戸時代的服装神輿走向寺届。是江戸人気質」とある。ちなみに仲見世は「古色古典的江戸式街道」というのだそうだ。麗江でのホテルではNHKがリアルタイムで衛星放送で見られたので三社祭も、警官を射殺した「立てこもりヤクザ男」も「岡山の水道管破裂」なども生中継(時差で1時間遅)で見た。今日朝のテレビの予報によると今日22日の麗江の天気は「雨」。到着した18日は天気が一週間ぶりに好転したばかりで、その晴天が21日まで続いたことになる。何という天気に恵まれた今回ま旅だったのであろう。誰に感謝するでもなく己が「お天気男」のラッキーさを感ずる。帰国の日、昆明空港まで徒歩で行く。国内線は混雑しているのに国際線は数人の客がいるだけ。「大阪行きはガラガラだよ」とチェックインカウンターの男がいう。それでも国際線の窓側はイヤなので通路側に席を確保する。国際線ロビーには、ミネラルウォーターのサービスがあり、「空港山泉・飲用純浄水」とある。さしずめ「空港名水」といったところで、山地水明の昆明ならではのサービスだ。昆明ー関西空港の航路はJASが開発しJALが引継いだ日本と昆明間唯一の直行便で、現在は中国東方航空との共同運航便だ。この客の数だと路線維持も先が見えているようだ。予定より20分も早く出発。関空には30分早く到着した。すぐ羽田に向かう便で帰京する。
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